
なにかの記念日にワインを買ってみたい。
そう思っても、ワインが持つ高級なイメージが先行して、なかなか手を出せない方も多いのではないでしょうか。
でもご心配はご無用。
ワインの価格帯は非常に幅広く、決して高額なものばかりではありません。
ワイン初心者でも気軽に味わえる値段の銘柄が、数多く存在します。
日本語では「葡萄酒」と美しい言葉で訳されるワインとは、いったいどんなお酒なのでしょうか。
これからワインに触れてみたい方、ワインにハードルの高さを感じる方のために、楽しくワインを語っていきます。
歴史が語るワインと人間の美味しい結びつき

ワインはいったいいつ頃誕生し、どんな意味を持っていたのでしょうか。西洋におけるワインの概念を簡単にご説明いたします。
ワインのブランドは古代には存在していた
ワインは現在、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで生産され、世界中で愛飲されています。
ワインの存在が文献上で確認されているのは、紀元前2000年ごろのバビロニアです。古代エジプト、ギリシア、ローマなど世界史に登場する文明のなかでも、ワインの生産が確認されてきました。また当時のワインはただの嗜好品ではなく、生水による疫病予防のための必需品であったという説もあります。
面白いことに、古代ローマ時代、つまり2000年前にはすでに、ワインの「ブランド」が存在していました。当時のインテリたちによって激賞されたこれらのブランドワイン、その価格は通常のワインの約4倍であったことが、古代ローマ遺跡として名高いポンペイの発掘品から判明しています。
とはいえ、そんな高価なワインを味わえるのはごくわずかな富裕層でした。古代の庶民たちもワインを気楽に楽しんでいたことは、各地に残る数々の居酒屋の遺跡が証明しています。これらの遺跡から見つかったワイン貯蔵のための入れ物や、人々が立ち飲みしたカウンターが、庶民のためのワインの存在を裏付けているのです。
ワインの発祥に「神」あり?日本酒との共通点
日本では、神道の神様に捧げるお酒を「お神酒」と呼びます。古代の日本では、この神聖なお酒を造る特殊な役職が設けられていたほどでした。
この概念は、東西の世界に共通していたようです。
古代ギリシアやローマにはバッカスという名のワインの神がいたほか、キリスト教が普及した中世ヨーロッパでは、ワインは儀式に用いられる大事な飲み物でした。レオナルド・ダ・ヴィンチなどの芸術家が描いた《最後の晩餐》にもワインが登場していることは、ご存じの方も多いかもしれません。
現在もこの風習は変わらず、キリスト教会では赤ワインがミサで用いられています。
その歴史150年!日本のワインとワイナリー
日本では、ワインは「輸入するもの」と思われがちですが、実はワイン製造の歴史は想像以上に古いものです。
日本人とワインの関連はどのように生まれたのでしょうか。
戦国大名も飲んでいた?ワインの渡来
日本人が初めてワインを口にしたのは、16世紀のことでした。
ポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルが日本にもたらした赤ワインを、大内義隆という大名が口にしたという記録が残っています。また、織田信長や豊臣秀吉も、ヨーロッパから渡来したお酒を珍重していたといわれています。マスカットベリーAとは?日本生まれのぶどうの品種
日本におけるワイン製造が開始されたのは1870年頃。およそ150年も前のことです。
甲府で始まったワインの製造において大きな転換点となったのは、マスカットベリーAやブラッククイーンなど、日本の風土に適したぶどうの品種が誕生したことでした。日本独自の交配品種が登場したことで、ワインに適したぶどうの収穫が確保できるようになったのです。
一升瓶も存在する!日本におけるワイン製造
日本におけるワイン製造の歴史の古さを物語るもののひとつに、ワインの一升瓶があげられます。
現在もワインの生産地として知られる山梨県では、明治時代からワインを製造し、日本酒と同じように一升瓶サイズで売買していました。ワイン農家では、この一升瓶から茶碗にワインを注いで晩酌をしていたと伝えられています。年末年始や冠婚葬祭にも登場したといいうこの一升瓶ワイン、山梨県におけるワイン製造の歴史を物語る証人といえるかもしれません。
ちなみに、甲斐国一宮浅間神社のお神酒は今も、赤ワインが使用されているそうです。
現在、日本国内では年間約12万リットルのワインが製造されています。これは10年前と比較するとおよそ1.5倍、日本各地には300を超えるワイナリーが存在し、その美味を競い合っているのです。
ワインの値段の不思議を探る
ワインを手に取ることを躊躇する理由のひとつに、その価格があげられるかもしれません。オークションなどで落札されるワインの価格はニュースにもなるほどで、一般人にはとても手が出ないという印象があります。
しかし国によっては、ワインは「酔う」ための手段ではなく、日常的な飲み物です。そうそう高額なワインを買っているようには見えません。西洋におけるワインの値段事情は、どうなっているのでしょうか。
ワインの最高額は?
まずは、みなさまがイメージする高額のワインについてご紹介いたしましょう。
現在も伝説となっているワインの価格は、2018年、オークションで落札されたものでした。その価格、なんと1本55万8000ポンド(約6000万円)。この価格をはじき出したのは、ワインになじみのない方でも一度は耳にしたことがあるかもしれない「ロマネ・コンティ」です。シロウトには理解できないその価格の理由は、生産年や出所の確かさなど、いくつかの条件が完璧に揃ったためといわれています。
ワインの評価は個々の嗜好で
想像を絶する高価なワインの金額がニュースになる一方で、歴史的にワインを消費する国々では、ごく安価なワインがたくさん販売されています。ワインの生産量が多い地中海沿岸の国々では、スーパーに行けば1000円以下のワインがずらりと並んでいますし、青空市場に行けば量り売りのワインもよく目にします。
日本では毎秋話題になるボジョレー・ヌーボーは、実は欧米諸国ではそれほど評価が高いワインではありません。赤ワインは熟成してこそ美味しいと信じている人が多いため、いわゆる「新酒」であるボジョレー・ヌーボーは話題にもならないのです。
そしてワイン生産国では、地元で作られる手ごろな値段の「おらが町のワイン」を愛する人が大半です。これはもちろん、そこに郷土愛の強さがあるためですが、同じ土壌から生まれる地元の食材との相性が抜群という、実質的な理由もあります。実際、レストランに行って薦められるのは、高名なブランドのワインではなく地元産のワインです。
ワインはちょっと苦手というかたがたも、日本の風土で生まれたメイド・イン・ジャパンのワインならば、舌に馴染んで美味しいと感じるかもしれません。ワインの美味とはあくまで個人の舌が基準であり、値段やワインサイトによる評価は二の次と考えてよいものなのです。
最後に
世界中で愛されているワインは、古代から社会の中で重要な役割を果たしてきました。ワインとは本来、富裕層だけではなく庶民も親しんできた飲み物であることは、歴史が証明しています。
価格や美しいラベルに惹かれて手に取ったその1本が、高価なワインよりも美味なんてことも起こり得るのがワインの世界です。ブランド力に左右されず、ぜひお手頃な価格のワインから楽しんでいただきたいと思っています。